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私たちについて
―「境界のある暮らし」から、わたしたちの関係性を編みなおす―
はじまりの違和感
誰かのために動いているはずなのに、ふとした瞬間、自分のことがわからなくなる。
まわりに気を遣いすぎて、気がつけば言いたいことが言えないまま終わっている。
やさしくありたい、理解したい、つながりたい。
その願いのなかで、自分の輪郭がじわじわとにじんでいくような感覚がある。
それでも私たちは、「よかれと思って」「大人だから」「親だから」「プロとして」などの理由で、その違和感にフタをしてしまいがちです。
けれど、その「フタをした違和感」こそが、ほんとうは社会の構造や関係性の在り方を見直す手がかりなのではないか。
そう思ったとき、「グラフトーン研究所」という構想が静かに動き出しました。
わたしたちは信じています。
境界を持つことは、関係を切ることではない。
むしろ、相手とのちがいを尊重しながら、ともにいるための術なのだと。
「わたし」と「あなた」のあいだに静かな線を引くことは、より誠実な出会いのための準備ではないか、と。
この研究所は、そんな問いから始まる場所です。
日常に潜む違和感を起点に、暮らしを編みなおす新しい実践と思想の交差点として、
わたしたちはこの「グラフトーン研究所」を設立します。
私たちの問い
この研究所は、明確な答えやゴールを求める場所ではありません。
むしろ、「問い続けること」そのものに意味があると考えています。
たとえば、こんな問いを持っています:
・やさしさと自己犠牲の境界は、どこにあるのか?
・ 「本音を言わないほうがいい空気」は、どうやって生まれるのか?
・ わたしの正義と、あなたの正義が違うとき、どうしたら共にいられるのか?
・ 「ちゃんとすること」に疲れたとき、人はどう生き直せるのか?
・ 境界を引くことが、孤立ではなく自由と安心につながるのはなぜか?
これらの問いに、すぐに答えは出ません。
でも、答えが出ないからこそ、人と人との関係や、社会の構造について深く考え続けられる。
「違和感」は、わたしたちの感受性のセンサーであり、よりよい社会の兆しをとらえるレーダーです。
グラフトーン研究所は、このレーダーを信じ、まだ見ぬ関係性のあり方や、暮らしの輪郭を模索し続けます。
グラフトーンという名前に込めたこと
「グラフトーン」という名前には、わたしたちが信じるつながりのかたちが込められています。
graft(接ぎ木) は、異なる植物同士が互いの特徴を失うことなく、一部をつなげて新しいかたちで生きていく技術です。
異質なもの同士が、無理に同化することなく、それぞれの根や葉を保ちながら、新しい生命を紡いでいく。
tone(音・響き) は、そのつながりのなかで生まれる感覚や、空気のニュアンス、言葉にできない微細な感情のやりとりを指しています。
私たちは、こうした「ちがいを保ったまま共に響く」状態に、これからの社会や関係性のヒントがあると考えています。
強く主張しすぎず、しかし消えもしない。
同化ではなく共鳴。
同調ではなく余白。
そんな「半分でつながる」在り方を、グラフトーンという名前に託しました。
グラフトーン研究所の役割
グラフトーン研究所は、単なる調査研究の場ではありません。
また、啓発や教育にとどまる場所でもありません。
わたしたちは、「思想」「実践」「表現」「共創」という4つの軸を横断しながら、暮らしのなかにある違和感を起点に、関係性のあり方を再発明していくプロジェクトです。
▷思想の探究(思想編)
*境界、ケア、感情労働、対話、自由、制度などをテーマにした独自の概念構築
*哲学・社会学・教育学・臨床実践の知と日常生活の感覚をつなぐ
*連載、note、書籍などによる発信
▷日常の実験(実践編)
*家族、職場、教育、地域などの具体的な場における実践的プロトタイピング
*対話のルール、制度のデザイン、相互ケアのしくみの試行錯誤
*「うまくいった/いかなかった」両方を知として共有する姿勢
▷つながりのデザイン(共創編)
*実践者、研究者、表現者が互いの境界を尊重しながら関わる協働の場づくり
*オンライン/オフラインのサロン、対話イベント、フィールドワークなどの開催
*小さな輪が重なって広がる「グラフトーン的ネットワーク」の育成
▷教育と学び(育成編)
*境界を学び直すための連続講座、リトリート、企業研修、講演など
*知識の獲得ではなく、感受性と実践力を育てる「共に学ぶ」場
*立場や肩書きを超えて「気づく力」を育て合う共同体
わたしたちが大切にすること
グラフトーン研究所は、以下の価値観を活動の根幹とします。
問いに開かれていること
「こうあるべき」という正解や主張に急がず、むしろ揺れや未完成を歓迎する姿勢。
ちがいを尊重すること
同じ言語で語り合えなくても、それぞれの「異なる生」のあり方を認め合う態度。
否定よりも接続を選ぶこと
誰かを「わるもの」にする語りではなく、状況を構造的に見て、可能性を編みなおす視点。
小さな実践から始めること
大きな社会変革を目指すのではなく、暮らしの単位から変化を起こすこと。
感受性を知として扱うこと
数字にならない違和感や感情の動きを、価値ある手がかりとして記述する技術。
これから、ともにつくる
この研究所は、完成されたビジョンや正解を共有する場所ではありません。
むしろ、これまで見過ごされてきた感覚や小さな違和感を出発点にして、少しずつ世界の見え方を変えていく、ゆるやかな実験空間です。
だからこそ、あなたの「まだ言葉になっていないけれど、ずっと感じていたこと」や「こうじゃないとずっと思ってきたけれど、うまく言えなかったこと」こそが、この場所を育てる種になるのです。
わたしたちは、問いながら生きる人たちと出会い、一緒にゆるやかな実践を重ねながら「境界のある暮らし」を少しずつ社会に根づかせていきたいと考えています。
まずは小さなことから。
声にならないものに耳をすますところから。
ともに、始めていきましょう。
グラフトーン研究所
設立メンバー一同

