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優しい間合い
境界という言葉を耳にしたとき、多くの人はそこに冷たい壁や、他者を遠ざけるための分断の線を思い浮かべるかもしれません。
しかし、この思想においてお伝えしたい境界とは、決して誰かを締め出すための道具ではありません。
それはむしろ、お互いがいっしょにいるためにこそ必要となる、優しく穏やかな間合いのことなのです。
私たちが他者と深く関わろうとするとき、相手を大切に思うあまり、無意識のうちにここまでは私という輪郭を曖昧にしてしまうことがあります。
その結果、自分の時間や心のスペースを相手に譲り渡し、気がつけば相手の感情や抱えている課題までもが、自分の内側へと流れ込んできてしまいます。
たとえば、目の前の誰かが不機嫌な曇った表情をしているとき「自分が何か悪いことをしたのではないか?」と胸をざわつかせたり、「機嫌を直してあげなければ・・・」と頼まれてもいない役割を背負い込んでしまうことはないでしょうか?
その瞬間、本来は相手の機嫌という空模様であったはずの曇り空が、いつの間にか自分自身の頭上をも覆い尽くしてしまっているのかもしれません。
境界が整っている状態とは「ここから先は入ってこないで!」と相手を突き放すことではありません。それは、自分と相手の立っている領域が違うと意識できている時です。
その時、私たちは初めて「相手の領域に土足で踏み込んでいないか?」「自分の領域を明け渡しすぎていないか?」に気づくことができます。
心の中で「これはあなたの課題だね」「これは私の疲れだな」と自分なりに気づけていること。
この冷たい分けるための線ではない優しい間合いを保つことこそが、互いの存在を真に尊重し、相手の曇り空に引きずられず、お互いがありのままでいられる関係性へと繋がる第一歩となるのです。


